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エッセイ
大井沢、釣りの思い出
寒河江 芳美
ずいぶん前の話だが、寒河江川の釣りと言えばほとんどが上流の根子川で、見付川の別れかその上流から入り大堰堤までして、最後に堰堤のプールをねらうのがパターンだった。
しかし、このプールは深く広くて、絶対大物がいると確信していたのだが上から落ちてくる多量の水で常に波しぶきが立ち、どこをねらったらいいのかわからないまま、ドライやウェットをキャストしては毎回、敗北感にさいなまれて帰るということが何年も続いた。

定石どおり、その下には魚が集まっているはずと思ったが、波が窪みに当たり砕け散っていた。
そのうえそこは、一番近くの足場が確保できるところからでも10メートル以上あり、たとえ何とかキャストしたとしても、波にもまれて直ぐ沈んでしまうのは目に見えていた。
しかし、わかっていながらもカディスを結びキャストした。
フライはねらったところに着水したが、やはり1秒と経たないうちに波に飲み込まれてしまった。その後、何回か繰り返したが同じことだった。
そんなとき、ふと、映画『パピオン』のラストシーンが頭に浮かんだ。
まわりが断崖絶壁の囚人の島から、無実の罪を着せられパピオンが執念で脱出するというもので、断崖の上から波を見ていたとき、6つまでの波は岩に戻って打ち付けるが、7つ目は沖に運んでくれる波であることを発見し見事脱出に成功する・・・・・。
私も、窪みに打ち付ける波をじっと見た。
すると、なんと何回目の波か忘れてしまったが、何回かに1回波どうしが干渉しあって水面がフラットになるときが数秒間あること発見した。
興奮しながらも、波を数えキャストした。
フライは水面がフラットになった瞬間、絶好のポイントに着水した。かなり長い時間浮いていたように感じたが、おそらく、3秒くらいだったろう。
イワナがジャンプしてフライに食らいついてきた!
私は、まさしく「してやったり!」と思いながら引き寄せた。

夢に描いていたような大物ではなく30センチくらいであったが、これほど満足した釣りはなかった。
イワナをリリースしたあとガッツポーズで歓喜の声をあげた。
なんでフライフィッシングってこんなに楽しいんでしょう。